Dusty Springfield

Dusty Springfield - Dusty in Memphis - 1969

1. just a little lovin' 2. so much love 3. son of a preacher man 4. i don't want to hear it anymore 5. don't forget about me 6. breakfast in bed 7. just one smile 8. the windmills of your mind 9. in the land of make believe 10. no easy way down 11. i can't make it alone

ビーハイブ・ヘアーと濃いマスカラがトレードマークのダスティ・スプリングフィールド。白人がソウルを歌うと必要以上に「黒っぽさ」を意識して大袈裟になりがちだけど、彼女の歌い方にはそうした気負いのようなものがなく、ソウルとポップの配分が気持ちいい。また曲によっては結構都会的な解釈も取り入れたりアダルトな雰囲気を醸し出したりしているのもあって、ダスティ・スプリングフィールドを最初に聴くのも最終的に聴きこむのも、このアルバム「 dusty in memphis 」になるんじゃないだろうか。

ダスティ・スプリングフィールドがこのアルバムを作ったのは1969年。彼女はイギリス生まれでありながらモータウン風のポップな曲を好み、1964年頃にはバート・バカラックの書いた曲を歌いヒットを連発していた。

そんな時、彼女の中にソウルの資質を見出したプロデューサーのジェリー・ウェイクラーが彼女の憧れのミュージシャンであったアレサ・フランクリンやオーティス・レディングのアルバムに参加していたセッションマンと一緒にレコーディングさせようと思いつき、彼女をメンフィスにまで連れて行く。

しかしダスティはあまりの緊張の為にその場では歌えず、後にニューヨークでボーカルだけをオーバーダビングしたのが「 dusty in memphis 」。このアルバムは今でこそ名盤と言われているけれど、発売当時、評論家やファンには評判がよかったものの、商業的に成功したか？というとそれ程でもなかったみたいです。
　

このアルバム以降の簡単なディスコ・グラフィ

1970年以降
彼女は３枚のアルバム「 a brand new me 」(70)「 see all her faces 」(72)「 cameo 」(73)を発表しますが「 dusty in memphis 」(69)と似たような作品傾向となった。その為、評論家やファンには歓迎されても、商業的には必ずしも成功したとは言えない状態が続いた。その結果彼女はレコード会社を転々と渡り歩くことになってしまう。

1979年。
なにをしても現実が好転しないと思った彼女は自分の作品を自身でプロデュースしようと考え、同年「 living without your love 」を発表。女性がセルフ・プロデュースというのは現在では割と耳にする製作方針だけど、1980年間近の男性社会とも言える音楽業界の中にあった当時、彼女自身の存在がレコーディングの現場では全く受け入れられなかった。

その為彼女はより完璧主義を場に求め、常に現場に緊張を強いなければレコーディ ングひとつ取り仕切ることが出来ない状況が続いた。結果、このアルバム発表後彼女は元々神経質であったのが災いして精神が不安定になり、やがてドラッグやアルコー ルに溺れるようになる。以降何年にも渡って彼女は病院やリハビリ施設の入退院を繰り返すことになり、それは1983年にまで続くことになる。
　
1987年。
尊敬するミュージシャンとしてダスティの名前を公言していたペット・ショップ・ボーイズが彼女に共演を申し込む。彼らとレコーディングした「 what have i done to deserve this? 」は、ペット・ショップ・ボーイズのアルバム「 actually 」からのセカンド・シングルとして発表され、全英と全米で大ヒット。最高位２位を記録。この記録はダスティにとってアメリカのヒットチャートにおける過去最高の記録だった。

1989年。
再びペットショップ・ボーイズと組んでシングル「 nothing has been proved 」を発表。
　
1990年。
ダン・ハートマンをプロデューサーに迎えたアルバム「 reputation 」を発表。このアルバムからはペットショップ・ボーイズのプロデュースによる「 in private 」が、クラブ・チャートで大ヒットする。

1994年。
アルバム「 a very fine love 」の発表。まもなくダスティは乳ガンと診断され、後日手術を受けて一時は快方に向かったものの、1997年に再発。

1999年３月９日
ダスティ・スプリングフィールドは、59歳でこの世を去った。彼女がロックの殿堂入りを果たす、わずか５日前のことだった。

この記事は2008年にシェルビィ・リンが発表したダスティのトリビュート・アルバムへと続きます。

2010/10/23      D Dusty Springfield Shelby Lynne