Shelby Lynne
Shelby Lynne - Just A little Lovin' - 2008
1. just a little lovin' 2. anyone who had a heart 3. you don't have to say you love me 4. i only want to be with you 5. the look of love 6. breakfast in bed 7. willie and lauramae jones 8. i don't want to hear it anymore 9. pretend 10. how can i be sure
このページは dusty springfield「dusty in memphis」からの続きです。
just a little lovin '- Shelby Lynne ver
just a little lovin '- Dusty Springfield ver
1. just a little lovin' 2. anyone who had a heart 3. you don't have to say you love me 4. i only want to be with you 5. the look of love 6. breakfast in bed 7. willie and lauramae jones 8. i don't want to hear it anymore 9. pretend 10. how can i be sure
このページは dusty springfield「dusty in memphis」からの続きです。
シェルビィ・リンにとってこのアルバム「 just a little lovin' 」(08)は、10枚目のスタジオ・アルバム。アルバムや曲のタイトルを見ればわかるとおりダスティ・スプリングフィールドの代表曲であり、ジャケットのポーズは「 dusty in memphis 」そのまま。収録されている曲にしても全11曲のうち10曲がダスティの曲で残り1曲が新曲となっている以上、これはもうシェルビィからダスティへのリスペクトな作品なのは間違いない。
シェルビィ・リン、彼女は1989年にカントリー・シンガーとしてCBSからデビューしたのだけど、決して順風満帆なキャリアのスタートではなく、 アルバム・セールスは芳しくなかった。結果、そういった状況が何枚ものアルバムで続いてしまったが為に折角手にしたメジャーとの契約を切られてしまい、以降インディペンデントでの活動を余儀なくされてしまう。
心機一転する為に彼女はナシュビルから故郷であるアラバマに戻ると、昔よくしていたように腰を据えて次のアルバムの製作に取り掛かる。1999年、シェリル・クロウのデビュー・アルバムを手掛けたビル・ボットレルをプロデューサーに迎え 「 i am shelby lynne 」を製作。このアルバムはデビューして10年目、アルバム枚数6枚目にして「グラミー新人賞」を彼女に齎した。記念すべきそのアルバムの内容はポップ、ソウル、ブルースにロック・フレーバーを塗したものとなり、これからの彼女の新たなる幕開けを期待させる程、力強かった。
簡単だけど以上がこのアルバムまでのシェルビィ・リンの足跡。つまり、彼女の中のミュージシャンの部分がダスティの「 dusty in memphis 」以降の人生の中に、かつての自分を見つけ、そこに共感を覚えてもなんら不思議はないかなと思えました。
音楽の楽しみ方はいろいろある。音だけを聴いて「ああ、こういうものか」という場合と、歌詞を含めて「なるほど、だからこういう歌い方なのか」と、いろいろだ。けれどこのアルバムに関しては彼女は大いに歌詞とその半生の中に何かを見て、それを歌に籠めているように思えるし、理解できないものに気持ちを込めるのは無理な話だ。
だからこのアルバムは彼女からダスティ・スプリングフィールドへのトリビュートでありながら、自分の過去を慈しむアルバムでもあるのだろう。アルバムの中の彼女は限りなく優しく、各曲を撫でるかのようにダスティの遺産を歌う。60年代後半にダスティが歌っていたのは幾分テンポが早く感じられてイメージとしては「若さ」を連想させる曲が多かったけど、このアルバムで歌われる曲達は限りなくスローでいて音数も必要最低限に抑えられ、「大人」をイメージさせてくれる。
各楽曲のアレンジにしても今回はジャズとボサノバを加えて歯切れよく仕上げ、その完成度は高い。そんなアルバムを通して聴いてみて「凄いコンパクトに纏めているなぁ」っと思ってジャケットを確認すると、なんと!プロデューサーがフィル・ラモーンじゃないか!これは驚きました。
今までの経緯が経緯だけにいきなり巨匠フィル・ラモーンをプロデュースとして起用出来た経緯には興味があるけれど(やはりグラミーを獲ったのが大きかったのか)、実に彼女のいい部分が表現されていると感じましたし、ここまで彼女が歌が上手いとは思っていませんでした。能力を引き出せるプロデューサーと組むと、こんなにも違うんですね。
ダスティの「 dusty in memphis 」(69)は朝から夕方にまったりと聴きたいアルバムだけど、シェルビィの「 just a little lovin' 」(08)は夜から明け方にしっとりと聴きたい1枚だ。
2010/10/24 Dusty Springfield S Shelby Lynne