Diane Schuur - Ordinary World
ジャズ・シンガー&ピアニストのダイアン・シューアが2005年に出したアルバム「Schuur Fire」から " Ordinary World " を私訳。もともとこの曲はデュラン・デュランがアルバム「Duran Duran (The Wedding Album)」(93)で発表した曲。これまでにもダイアンはその多くのアルバムの中でブルースやソウルのカバーはあったけど、ロック系でしかもデュラン・ デュランをカバーするのは意外だったし、その両者の違いが大変面白い。
デュラン・デュランのボーカリスト、サイモン・ル・ボンの歌うのは、心のどこかでまだ思い出に捕らわれながらも「僕は普通の世界を探していこう」と優しいバラードとして歌っているのに対し、ダイアンが歌うのはラテン風味。もうイントロからして思い出なんかポイッて捨てて「私は普通の世界を目指すのよ」っという意気込みが強く感じられます。なんか彼女の歌い方を聴いていると男と女の思い出に対する向き合い方の違いがよく出ていて、女という生き物は男が思うほど思い出の中に生きてもなけりゃ、もっと現実的で前向きなんだな・・・と変なトコで考えてしまうアレンジ。
そんな彼女の思い切りの良さと陽気さがこのアルバムにはよく出ていて、収録曲12曲、そのどれもがダイアンの声とラテン風のアレンジによって新しい魅力に輝いている。雨の日の休日や春、秋に聴きたい1枚。愛聴盤。
Came in from a rainy Thursday on the avenue,
雨の日の木曜日、大通りにそれはやってきた
Thought I heard you talking softly.
そう、あなたのやさしい声が聞こえたのよ
I turned on the lights, the TV and the radio,
私は引き返して部屋の明かりを点け、テレビとラジオも点けたけど
Still I can't escape the ghost of you.
あなたの亡霊から逃げることができない
What has happened to it all?
これって一体全体どういうこと?
"Crazy," some would say.
「気が変になった」と言う人もいる
Where is the life that I recognize?
私が日常だと思っていたものはどこに行ったの?
Gone away...
どこなのよ・・・
But I won't cry for yesterday, there's an ordinary world,
でも私は昨日を求めて泣かない、どこかにある「普通の世界」を
Somehow I have to find.
何とかして見つけるのよ
And as I try to make my way to the ordinary world,
そして私は自分なりのやり方で「普通の世界」を探しているうちに
I will learn to survive.
生きて行くことを学ぶでしょう
Passion or coincidence once prompted you to say:
情熱なのか偶然の一致なのか、一度あなたはハッキリ言った
"Pride will tear us both apart."
「プライドが僕達をばらばらにするだろう」って
Well now pride's gone out the window, cross the rooftops, run away,
その通りよ、プライドは窓から飛び出して屋根を越え、逃げて行ったけど
Left me in the vacuum of my heart.
何もかも吸い出された私の心はからっぽ
What is happening to me?
一体私に何が起こっているの?
"Crazy," some would say.
「気が変になった」と言う人もいる
Where is my friend when I need you most?
私が一番必要としている時なのに、友達はどこなの?
Gone away...
どこなのよ・・・
But I won't cry for yesterday, there's an ordinary world,
でも私は昨日を求めて泣かない、どこかにある「普通の世界」を
Somehow I have to find.
何とかして見つけるのよ
And as I try to make my way to the ordinary world,
そして私は自分なりのやり方で「普通の世界」を探しているうちに
I will learn to survive.
生きて行くことを学ぶでしょう
(Ooh, Ahh, Ooh)
Papers in the roadside tell of suffering and greed.
道端の新聞は苦悩と欲深さについて知らせている
Fear today, forgot tomorrow... ooh
今日はね。でも明日になると忘れてるわ・・・
Here beside the news of holy war and holy need,
聖なる戦いと信仰を必要とするニュースのそばの
Ours is just a little sorrowed talk, just blown away
私たちの悲しい話なんて、吹き飛ばされてポイッ
But I won't cry for yesterday,
でも私は昨日を求めて泣いたりはしない
I will learn to survive.
生きて行くことを学ぶの
I won't cry for yesterday,
私は昨日を求めて泣いたりはしない
I will learn to survive.
生きて行くことを学ぶの
Any world...
どんな世界も・・・
Is my world...
私の世界・・・
Every world...
あらゆる世界・・・
Is our world...
私たちの世界・・・
Anyone.
誰かの
彼女はカウント・ベイシー楽団ともアルバムを作ったりしてる生粋のジャズの人だけど、それ以外のジャンルでもバリー・マニロウがプロデュースしたアルバム「Midnight 」(03)、丸々1枚ブルースをカバーした「Blues for Schuur」(97)、BBキングと収録した「Heart to Heart」(94)、そして様々なジャンルの曲をラテン風味にアレンジした今回の「Schuur Fire」(05)等々、「弘法筆を選ばず」状態。どのアルバムにも言えることだけど、とにかく伸び伸びと歌うから聴いていて気持ちいい人。
一応、ダイアンは91年にデビューということになっているけれど、それ以前にもアルバムは出していて、上の曲はアルバム「Deedles」(84)から New York State of Mind 。
最近の彼女はコンコード・レーベルを離れてヴァンガードに移籍し、そこからの新譜を6月7日にリリースとのこと。ヴァンガードと言えばギタリストのバディ・ガイも 席を置いていたブルースやフォークのアルバムが多いところだけど、彼女はどうしてそこを選んだろう・・・2000年以降コンコード・レーベルで出していた盤が凄く良 かっただけに気になりますが、新譜「The Gathering」にはマーク・ノップラー、ラリー・カールトン、カーク・ウェイラム、ヴィンス・ギル、アリソン・クラウスがゲスト参加することからも、意外と彼女はギターサウンドとの競演を楽しもうとしているのかも知れませんね。
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2011/04/16 2000 D Diane Schuur