Robert Cray Band - Phone Booth

83年のセカンドアルバムから " Phone Booth " を私訳

83年のセカンドアルバムから " Phone Booth " を私訳。アルバート・キングが「I'm In A Phone Booth」(84) で " Phone Booth " を、エリック・クラプトンが「 August 」(86) で " Bad Influence " を、それぞれカバーしています。

ロバート・クレイ、彼が発表したこのアルバムに内包された音楽性はブルース界だけではなくロック界の大御所にも影響を与えた。今作をリリースしてからのクレイはジョン・リー・フッカーやB.B.キング、アルバート・キング、エリック・クラプトンから自作への協力を求められたり、カバーされたりと枚挙にいとまがない。以降、クレイはレーベルを Hightone から Mercury へと移籍し「 Strong Persuader 」(86) を発表。このアルバムはブルースとしては異例の100万枚超えのセールスと波紋を呼び起こし、「Bad Influence」同様、彼の音楽やブルースを語る上で欠かせない作品となる。

古くからのブルース・ファンからしたら彼の音は「ブルースではない」という人もいるだろうけど、これは紛れもなく「彼の世代のブルース」だし、昔のスタイルのブルースだけでは今の時代、死に絶えはしないもののもっとマイナーなジャンルになっていただろう。そう考えるとブルースの先人達が彼に声を掛けたのはアルバム・セールスやギター・テクニックだけではなく、クレイの中にある「ブルースの先進性」にもあっただろうと思います。

実際のところクレイが出てきてからブルース界に勢いがついたのは紛れもない事実だし、「昔のスタイル」がそれなりの成功を収めながらシーンにその姿を見せたのは、マディ・ウォーターズがジョニー・ウィンターと組んでグラミーを獲得した一連の作品群、「Hard Again」(77)、「I'm Ready」(78)、「Muddy "Mississippi" Waters Live」(79)、「King Bee」(81)までだ。

元々ブルースは特定の民族や階級の文化であっただけに、各人の世代による生活背景が違ってくればそこから出てくる音や解釈が違って当たり前。クレイが体現するブルースは「彼の世代のブルース」や「彼の解釈」であって「昔のブルースの再現」ではないしね。ましてどんなジャンルにも言えることだけど「売れる」ということは「ポップになる」という側面を併せ持つこととなり、クレイはその「ブルース + ポップ」という公式を自分のアルバムに封じ込めることに成功している。更に「昔のブルースのアルバム」にはなかった「アルバムとしての構成」をブルースに持ち込んだ功績はとても大きい。実のところクレイって、凄く賢い人なんじゃないかな。

と、いろいろ書いたけど、このアルバム・タイトルの「Bad Influence (悪影響)」というのは「色眼鏡」とか「固定観念」で何かを推し量るということを指しているかも知れません。何でも長ければ、古ければ中身があるってモンでもないしね。

" Phone Booth "

I'm in a phone booth, baby
俺は電話ボックスにいる
Number scratched on the wall
壁には電話番号が刻まれていた
I'm in a phone booth, baby
俺は電話ボックスにいる
Number scratched on the wall
壁には電話番号が刻まれていた
I'm new in Chicago
俺はシカゴに来たばかり
Got no one else to call
誰一人電話する相手もいない

Been walkin' all day
一日中歩いたけど
For old friends I can't find
古い友達を見つけることは出来なかった
Hearts so cold
拠り所が欲しい・・・
Had to buy me some wine
こんな時は酒を買いたいが
Calling you, baby
お前を呼び出す為に
Took my very last dime
最後のダイムを使っちまったんだ

(Robert Cray - Guitar Solo)

I'm in a phone booth, baby
俺は電話ボックスにいる
Number scratched up on the wall
壁には電話番号が刻まれていた
I'm in a phone booth, baby
俺は電話ボックスにいる
Number scratched on the wall
壁には電話番号が刻まれていた
I'm new in Chicago
俺はシカゴに来たばかり
Got no one else to call
誰一人電話する相手もいない

Said call Big Rita
「リタを呼んでくれ」そう言ったんだ
Anytime, day or night
朝から晩まで一日中
You know I'm broke and I'm cold, baby
お前も知ってるように、金もなけりゃ心も冷え切ってるんだ
And I hope you'll treat me right
だから少しでいいから優しくしておくれ
I'm in a phone booth, baby
俺は電話ボックスにいる
With the cold wind right outside
外では冷たい風が吹いている


Robert Cray - Bad Influence 同じくアルバムからタイトル・トラック。 この曲はクラプトンがアルバム「August」(86)でカバーしています。

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2011/05/20      1980 R Robert Cray