Robert Cray - Pardon
ロバート・クレイが1999年に出したアルバム「Take Your Shoes Off」から " Pardon " を私訳。デビュー・アルバムの「Who's Been Talkin'?」(80) をトマト・レーベルで、「Bad Influence」(83) と「False Accusations」(85) をハイトーンから出した後、クレイはマーキュリーに移籍。そこで「Strong Persuader」(86) を発表。クレイは続けてアルバムを出すが過去の「Bad Influence」(83)「Strong Persuader」(86) ほどにはセールスが伸びず、レーベルとの関係が悪化。やがてクレイはメジャーのマーキュリーからインディペンデント・レーベルのライコへと移籍する。
そして移籍後のはじめての作品がこのアルバム「Take Your Shoes Off」となった。聴くまでは「メジャーからインディペンデントに行って、クレイを取り巻く環境ってどうなのかなぁ・・・」と心配してたけど、聴いて安心、訳して納得!さすが、クレイ!^^b
クレイがマーキュリーで出した「Strong Persuader」(86) 以降のアルバムにしても内容が悪いワケではなく、彼が何をどうしたいのかが伺える意欲作が続いていたのは間違いない。だから一枚一枚歌詞を読みながら聴いてみるとわかるけど、クレイは売れまくった「Strong Persuader」(86) の焼き直しを狙っていたわけではなく、ソング・ライティングの充実、メロディとの組み合わせを模索していたように思えます。
クレイが過去に出した「Bad Influence」(83) 「Strong Persuader」(86) のところにも少し書いたけど、オーソドックスなブルースの歌詞構成というのは、ブルース(憂鬱)という感情を前面に押し出すワードという面が大きく、散文的な記述が多いのがその特徴だった。そこでクレイは歌詞の表情や構成を考え続け、結果それらの目論見はこのアルバムで達成されただろうと感じました。
今回訳したこの曲は(少し変則的ではあるけど)「三人称」である男のことが語られるところがおもしろい。この三人称の視点で描くというのは小説でも感情移入がしにくく、音楽の世界ではなかなか見かけない視点。じゃあ、三人称で書くことのメリットはどこにあるのか考えてみると、それは人物だけではなくその後ろにある背景を描くことが出来ることだろう。そうすることでそこに居る人物の心模様を周りの状況から浮かび上がらすことが出来る。でもそれを歌詞という文字数の制約の厳しいところで作っていくのだから、ロバート・クレイはなかなか難しいことにトライしていると思います。比較的こういう風な歌詞の書き方するミュージシャンって言えば、ゲイリー・ムーア とかキャリー・ニューカマーかな。
今回のアルバムの音の方はというと「Hiサウンドを意識している」のが印象的。「Hiサウンド」というのは60年代後期から70年初頭にウイリー・ミッチェルを筆頭にして作られたソウル・ミュージックの傾向で、個人的な印象で書くと「独特の甘み、丸み、温かみ」が感じられる音のこと。アル・グリーン や O.V.ライト、 アン・ピープルズなんかがその代表的な音で何枚ものアルバムを作っていて、この時期に名盤が多い。
元々クレイはコテコテのブルースのみでアルバムを構成するということは今までにもしてなくて、そこにロックやソウルを混ぜ、オリジナリティを追及していた。けれどこのアルバムはブルースにソウルを足したというよりはソウルにブルースを足したと言ってもいいくらい、ソウル度が高い。しかも「歌の心」と書いて「うたごころ」、それまでクレイは披露しているから驚いた。彼ってこんなに歌上手かったっけ?
またこのアルバムには Steve Jordan の名前がプロデューサーとして挙がっているけれど、でもこのアルバムの楽曲が輝いているのはクレイが今まで試行錯誤しながら積み重ねてきた結果。ロバート・クレイってやっぱり凄いですよ。
" Pardon "
I hear him when he weeps and moans
私は彼が悲しげな声を漏らしながら
I've even seen him shed tears
暗がりで涙するのを見たことがあります
For after taking those wedding vows
それは結婚式の誓いのように
That didn't last many years
添い遂げなくてもいいものなのに
I've seen him walk the streets alone
彼が肩を落とし通りを歩いているのを見かけました
In the wind and rain cold and weak
それは弱い風と冷たい雨の中でした
Help the poor man save his heart
疲れた男が自分の気持ちを溜め込まないよう
Take him in, make him neat
受け入れ、彼の話を聞いて欲しい
And grant him a pardon
彼に許しを与えてください
Grant him a pardon from love
愛を持って許しを与えて欲しいのです
The people talk when he passes by
彼が通り掛かると人々は噂をする
And they don't seem to care
そんな彼等は気に掛けることはない
The pain he hides down in his soul
彼が心の底に隠している痛みを
That they don't want to share
分かち合いたくないために
If he could turn this world around
もし彼がこの世界の向きを変えることが出来たなら
He could be like you and me
彼はあなたや私でもあるのです
Help him break these chains of love
だから彼が愛の束縛を壊すのに手を貸して欲しいのです
Help the man go free
ひとりの男が自由になる為に
And grant him a pardon
そして与えてください
Grant him a pardon
彼に許しを与えてください
Grant him a pardon from love
愛を持って許しを与えて欲しいのです
(guitar solo)
And grant him a pardon
彼に許しを与えてください
Grant him a pardon from love
愛を持って許しを与えて欲しいのです
He's guilty of nothing that I can think of, oh no
私に考えつく限り彼はどんな悪いこともしていません
So let's not convict him
そんな彼に罪を科さないで欲しい
He just happens to be a prisoner of love
彼は囚われているだけなのだから、かつての愛に
So if you're out on that lonely street
あなたが人寂しい通りに差し掛かって
And by chance pass him by
そこで彼と擦れ違っても
Don't rush to judgement or put him down
今の滅入っている彼を見て判断しないで欲しい
Cause you could be that guy
あなたがその男の立場になることもあるのだから
Someone could take your heart to school one day
誰かがある日、あなたに心の持ちようを教えてくれるでしょう
And that would surely change your plans
そのことはきっとあなたの価値観を変え
And all the things you think you know
あなたが拘っていた全ての事が
Now you understand
その時、理解出来るでしょう
And grant him a pardon
だから与えてください
Grant him a pardon
彼に許しを与えてください
Grant him a pardon from love
愛を持って許しを与えて欲しいのです
All you got to do is
あなたがしなければならないこと
Grant him a pardon
それは許しを与えることです
Grant him a pardon
彼に許しを与えてください
Grant him a pardon from love
愛を持って許しを与えて欲しいのです
Grant him a pardon, baby
彼に許しを与えてください
Grant him a pardon from love
愛情を持って許しを与えて欲しいのです
Just grant him a pardon
彼に許しを与えてください
From love
愛を持って
Won't ya
あなたから
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2011/05/24 1990 R Robert Cray