B.B. King - The Thrill Is Gone
"The Thrill is gone"を私訳。
この曲はB.B.キングの持ち歌みたいなイメージがありますが、元々はロイ・ホーキンスが 1951年に発表したブルース・ナンバー。それをB.B.キングがアルバム 「Completely Well」(69)でカバーして、大ヒット。以降彼の名刺代わりの曲となります。最近は年齢もあって少し回数を減らしているみたいですが、B.B.キングは年間300日近くライヴしているというのは有名な話で、そこで必ず演奏するのが、この " The Thrill is gone "
歌詞を訳すと「別れ」の曲で、原曲者ホーキンスの歌詞の切り口のおもしろさは勿論のこと、B.B.キングが弾くギターの音色と音数少なさがこの曲を味わい深くしています。けれど「彼はどうしてこの曲をスタンダートにしたのか?」という部分に個人的に惹かれます。確かに彼にとっての大ヒットした曲という以外に、彼の原風景への想いがあるではないでしょうか。
B.B.キング、彼が生まれたのは1925年9月16日ミシシッピ州北西部、イッタベーナのプランテーションで生まれる。プランテーションについて wiki から抜粋すると
「大規模工場生産の方式を取り入れて広大な農地に大量の資本を投入し、先住民や黒人奴隷などの安価な労働力を使って単一作物を大量に栽培する大規模農園のこと。この「安価な労働力」とは、かつては植民地の原住民あるいは奴隷であり、現在は発展途上国の農民であったり、土地自体が先住民から奪われて経営者に売られていたりなどするため、労働者の人権が問題とされることがある。また水質汚濁・森林破壊・農薬問題などの環境破壊が問題とされることも多い」
実際のところプランテーションでの労働に限って考えればB.B.キングの世代ではそれほど無茶苦茶なことはなかったかも知れませんが、かつて黒人がどういう生活を強いられたか、どういうふうに扱われたかというのは嫌でも耳にしてきたことでしょうし、過去のインタビューを読む限りB.B.キングは差別について非常に敏感な人であり、FMとAMで掛かる白人音楽と黒人音楽の比率にまでその言及が及ぶ。更に彼は放送局にまで赴いて
「どうして黒人の音楽をもっと流さないんだ?」
「どうして白人の音楽と同じだけの時間をブルースに使わない?」
「どうして夜中の12時を過ぎないとブルースが流れない?」
・・と、相手に詰め寄る。そんな彼のストーリーを思い出しながらこの曲を訳していると、歌詞の中で執拗なまでに繰り返される " The Thrill is gone " は形を変えて根強く残り続ける「白人からの恐怖(暴力や差別)」を指し含めているのかなと感じた。
The thrill is gone
スリルは去ってしまった
The thrill is gone away
どこかに行っちまったんだ
The thrill is gone baby
スリルは去ってしまった
The thrill is gone away
どこかに行っちまったんだよ
You know you done me wrong baby
君自身知ってるように、君は俺にひどい事をした
And you'll be sorry someday
だからいつか後悔することになるだろう
The thrill is gone
スリルは去ってしまった
It's gone away from me
俺のところから去ったんだ
The thrill is gone baby
スリルは去ってしまった
The thrill is gone away from me
スリルは俺の元から離れちまったんだよ
Although I'll still live on
俺はまだ生き続けるけれど
But so lonely I'll be
寂しさを感じ続けるだろう
The thrill is gone
スリルは去ってしまった
It's gone away for good
収まるべき場所へと行ったんだ
Oh, the thrill is gone baby
スリルは去ったんだよ
Baby its gone away for good
他の誰かのところへ行ったんだ
Someday I know I'll be over it all baby
いつか俺にも全てが分かるだろう
Just like I know a man should
俺が一人前の男であったなら
You know I'm free, free now baby
君が知ってるように、俺は自由。今、自由なんだ
I'm free from your spell
君の魔法から解放され
I'm free, free now
今の俺は自由なんだよ
I'm free from your spell
君の魔法から解放され
And now that it's over
ようやく全てが終わったんだ
All I can do is wish you well
今の俺に出来るのは君の幸運を願うことだけだ
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