Ryan Bingham - The Weary Kind
映画「Crazy Heart」の " The Weary Kind " を私訳。この映画で印象的だったのがバッドがはじめてジーンと会った時のセリフで、それぞれの人生観を数少ないセリフで表現していた。
バッド「昔から記者になろうと思った?」
ジーン「自分のしたいことがわからなくて・・・でも二度としたくないことなら分かるわ」
バッド「結婚は?」
ジーン「ええ、昔したことあるけど、もういいの」
バッド「どうして?」
ジーン「運命じゃないのよ」
バッド「そんなのどうやったら分かんだよ?」
このバッドのセリフ「そんなのどうやったら分かんだよ?」、これがバッドという男に「残された全て」で、それ以外のものは現実と一緒にどこかに逃げて行ったのだ。そしてこの映画のもうひとりの主役はなんといっても挿入歌。
中でも今回私訳した " The Weary Kind " はバッドの中に「残された全て」であると言ってもいい曲。最初彼は、ある人物に頼まれて嫌々ながら曲作りを引き受けるのだけど、徐々に自分の気持ちをその曲に籠め始め、今までの自分と向き合っていく。
やがて出来上がった曲にしてもバッド自身が歌うのではなく、そこから発生するロイヤリティーすらも彼は人に渡してしまう。じゃあ、彼はこの曲を書くことで何を得たのか?得たものの半分はこの歌詞の中に書かれてあるし、あとの半分は映画で表現されている。
(Crazy Heart Soundtrack)
Your hearts on the loose
お前の心は諦めを知らない
You rolled them sevens with nothing to lose
何回失敗しようが、駄目で元々なんだし
And this aint no place for the weary kind
疲れ果てた奴に居場所なんてないのだから
You called all your shots
お前が自分で宣言したんだ
Shooting 8 ball at the corner truck stop
8ボールをコーナーに打ち込む時のように
Somehow this dont feel like home anymore
「どうやらここも落ち着ける場所ではなさそうだ」と
And this aint no place for the weary kind
疲れ果てた奴に居場所なんてものはなく
And this aint no place to lose your mind
怠けきった心に拠り所なんて在りはしない
And this aint no place to fall behind
負け犬がうろつける場所はないんだよ
Pick up your crazy heart and give it one more try
だからお前は猛けき魂を呼び戻し、もう一度やるしかないんだ
Your body aches
お前は気付いている
From playing your guitar and sweating out the hate
だからお前の弾くギターから憎しみが滴っているじゃないか
The days and the nights all feel the same
朝も晩も ずっと同じことを感じながらな
The whiskey has been a thorn in your side
ウィスキーは絶えずお前を苦しめ続け
that doesnt forgive
許すことはなかった
the highway that calls for your heart inside
だからお前の内なる叫びも届くことはない
And this aint no place for the weary kind
疲れ果てた奴に居場所なんてものはなく
And this aint no place to lose your mind
怠けきった心に拠り所なんて在りはしない
And this aint no place to fall behind
負け犬がうろつける場所はないんだよ
Pick up your crazy heart and give it one more try
だからお前は猛けき魂を呼び戻し、もう一度やるしかないんだ
Your lovers warm kiss
恋人のキスは心を温める
Its too damn far from your fingertips
でも、お前の指先から離れちまったんだよ
Cause you are the man that ruined the world
なぜなら、お前が全てをぶち壊しちまったからな
Your hearts on the loose
だけどお前の心は諦めを知らない
You rolled them sevens with nothing to lose
何回失敗しようが、駄目で元々なんだし
And this aint no place for the weary kind
疲れ果てた奴に居場所なんてないのだから
太郎の解釈
んー、一番の問題点は歌詞に出てくる「 you 」。これを「相手(ジーン)」と解釈するか「自分自身(今の自分が過去の自分に向き合って)」と解釈するかで、かなり意味が変わってくる。だけど映画を観ていてこの曲を作っていたバッドの心境から考えるとやはり「自分自身」と訳すのが自然だし、そうでないと映画のラストに結びつかないだろう。
アマゾンのレビューを読む と信じられないことに、このサントラの国内盤は歌詞の対訳が全く付いていないみたいですね。カントリーだからってアコギな商売してもいいってことじゃないのになぁ・・・。この映画の中の曲たちはもうひとつの主役でもあるのに字幕表示も部分的だし、ホント日本人の大半は表面的なことに流されることはあっても、中身を見ることしないよね。こんなんじゃ折角映画を深く理解したいと思っても無理な話だ(笑)
2011/05/04 2000 R Ryan Bingham Soundtrack