Ruthie Foster - Phenomenal Woman

5th「The Phenomenal」(07) から " Phenomenal Woman " を私訳

ルーシー・フォスターはテキサス州ガウゼ出身でアルバム「Full Circle」(97) でデビュー。最初の頃こそカントリー、ブルース風味の音作りをしていましたが、アルバムをリリースする毎にゴスペルやソウル・フレーバーが加わり、この5th「The Phenomenal」(07) でひとつの完成形を成しましたね。特に彼女の両親がゴスペルを嗜まれていた影響なのかスピリチュアルな要素もあって、ギタリスト以上にボーカリストとしても、その存在感を感じさせてくれます。

今回はこのアルバムに収められている " Phenomenal Woman " を私訳してみました。この曲の歌詞、これは60年代から活動しているアメリカの詩人であり作家でもあるマヤ・アンジェロウ(*1)が書いた詩。一見すると「(女性の)人権解放」と受け取れらそうな内容だけど、マヤ・アンジェロウがこの " Phenomenal Woman " に込めたメッセージは「自分らしさを大切にして」「毅然としなさい」ということじゃないかな。

そんな彼女の詩にルーシー・フォスターがメロディをのせるのだけど、これがまたアレサ・フランクリンのバージョンのナチュラル・ウーマンを髣髴させる仕上がりで、マヤ・アンジェロウの詩の暖かさみたいなものをよく表現しています。

(*1)マヤ・アンジェロウ
1928年ミズーリ州セントルイスに生まれる。様々な職を経験しながらも69年に「歌え、翔べない鳥たちよ」を出版。内容は彼女が16才までの人生を綴ったものですが、多くの人に支持されることとなりベストセラーとなる。やがて彼女は公民権運動にも深く関わりを持ち、以降も彼女が書き続けた詩が差別される人々の心の支えとなっていった。末尾にリンクあり。
 
" Phenomenal Woman "

Pretty women wonder where my secret lies.
美しい女性が不思議に思ってる、私の秘密がどこにあるのかって
I'm not cute or built to suit or fashion-model size.
私は可愛くないし、スーツも仕立てなければ、モデルのようでもない
When I start to tell them,
だから秘密を話しはじめても
They think I'm tellin' lies.
私が嘘をついていると考える
I say, "It's in the reach of my arms,
だから話すわ、それは手の届く所にあるのよって
The span of my hips,
大きなお尻について
The stride to my steps,
大股で歩くことについて
The curl of my lips."
めくれた唇について

I'm a woman. Phenomenal woman.
そう、私は女。自分を尊ぶことが出来る女
I'm a woman. Baby, that's me.
私は女。ベイビー、それが私

I walk into a room Just as cool as you please
私が部屋に入ると、それまで冷静に振舞っていた あなたは
And to a man they will stand
みんなと一緒に立ち上がり
And fall down on their knees.
床に膝を落として迎えてくれる
When they swarm around me
彼等が私の周りに集まる時って
Like a hive of honey bees,
まるで巣に集うミツバチのよう
I say, "It's in the fire in my eyes,
誰かに受け入れられる、それは目標を持ち
The flash of my teeth,
身嗜みに気を使い
The swing of my waist,
自発的に動いて
The joy in my feet."
気持ちを表現することで変わるもの

I'm a woman. Phenomenal woman.
そう、私は女。自分を尊ぶことが出来る女
I'm a woman. Baby, that's me.
私は女。ベイビー、それが私

It's in the arch of my back,
そのことが私の背筋を伸ばさせ
The sun of my smile,
笑顔を輝かせ
The ride of my breast,
胸をトキメかせ
The grace of my style.
生き方に恵みを齎す

Now you understand Just why my head's not bowed.
今、あなたは分かったでしょう、なぜ私が媚びないか
I don't shout or jump about or have to talk real loud.
私は叫ばないし、調子に乗ったり、大声で話したりもしない
When you see me passin', It oughta make you proud.
だから私を見かけたら、あなた自身が尊い存在なのだと思い出して欲しい
I say, "It's in click of my heels,
自分を尊ぶこと、それは力強く歩くこと
The bend of my hair,
個性を表現し
The palm of my hand,
自分から心を開き
The need for my care."
自身を労うことで感じられること

I'm a woman. Phenomenal woman.
そう、私は女。自分を尊ぶことが出来る女
I'm a woman. Baby, that's me.
私は女。ベイビー、それが私
That's me.
それが私


Ruthie Foster Live at Antone's - Phenomenal Woman

歌詞について

この曲のタイトルでもあり、歌詞でも繰り返される " Phenomenal "
これをどう解釈するのかは頭を悩ませたのだけど、一般的な意味だとPhenomenal →「自然現象の」「驚くべき」「異常な」「驚異的な」

「自然現象の」「異常な」だとそこには「自分の意思はない」し、「驚くべき」と「驚異的な」はニュアンスとして近いのだけど、その言葉を目にした時に少し考えてしまう。「何と比べて、驚異的なのか?」というふうに。そうなると歌を聴きながら歌詞を読んでいても意味がスコッと自分の中に納まらないから、訳すにあたって少し意味を開くことにしてみた。

じゃ、彼女はどういったものに対して、 Phenomenal 、だったのか?
たぶん「世間が作り、押し付けた女性像」に対してじゃないかな。まして彼女が支持され始めた60年代後期という時代を考えると、その女性像は「自発的であってはならないのが女=それが当たり前」という風潮だったろうしね。

そして「自分の意見を持っていて、それを公言する=自発的に活動する女」として「彼女が登場」した。だから「 Phenomenal Woman = 驚異的な女」なんだろうね。勿論、そこに至るまでには人種問題を避ける事は出来ないけど、彼女がその時代から現代まで延々と支持されているのは「自分の個性を大切にする」ことを書き続け公言し続けているからだと思います。

だからここの訳は「Phenomenal woman = 自分を尊ぶ事が出来る女」。最初は「自分を尊ぶ女」とも考えたのだけど「~出来ない時代に~をした」から「驚異的」なのだから「~出来る女」。どんなもんだろ?
 
映画「ポエティック・ジャスティス」 (93) で
マヤ・アンジェロの詩を主演のジャネット・ジャクソンが朗読しています。

関連リンク(マヤ・アンジェロウ)


リンク


2013/03/22      2000 R Ruthie Foster